ジョン君の追悼ページ

ジョン君はヒマラヤンとどこぞの得体の知れない猫の雑種です。
いや、母親は確かにヒマラヤンらしいが、父親はどこかのノラ猫なんだろう。
よくあるケースだ。
2004年6月12日腎不全のため死亡。

1991年7月ごろ
仕事関係で知り合いのペットショップより
ヒマラヤンの子猫がいるけど見に来ませんか?
との誘いに軽い気持ちで見に行った。
もちろん飼うつもりなど全く無かった。
第一、賃貸マンション住まいで
猫など飼えるわけがない。

ペットショップに着くと、
店の外の国道沿いの砂埃舞う歩道に
雑然と積み上げられた鳥かごの中、
真っ白で各先端部分のみグレーの
小さな子猫が座っていた。
どう見てもヒマラヤンには見えないが・・・
まさかこの猫??

言っちゃぁ悪いがここのおばさん、
ちょっと評判のやり手ババァである。
「そうそうその子よ」
「これ本当にヒマラヤンですか?」
「あら本当よぉ〜!!2万円でいいわ!」
嘘つき・・・(−−;
特徴からして確かにヒマラヤンの血は
入っているのであろうが・・・

とりあえずその時は触らせてもらっただけで
家に帰り、仕事場に向かった。
仕事場で事の成り行きを話していると
あらぬ噂を耳にする。
「あ〜・・・あの人ね・・・売れなかった子猫は
川に沈めるとかいう噂があるよね。」
・・・・なに?・・・沈める??
「噂だけどね」

その夜、私はその子猫を迎えに行った。

さて・・・どうしたものか。
見つかればマンションを追い出されるかも知れない。
ま、何とかなるさ・・・(−−)

そこのマンションで一年間はジョン君と過ごす事になる。
その後一生私の傍にいた猫である。
ついてきたのではないかも・・・
ついてこざるをえなかったというのが正解かもしれない。

その半年後、これまた
「チンチラの子猫がいるけどいらない?」
と他の人に騙されて、やちちゃんを迎え入れた。

その更に半年後、やちちゃんに春が来たので
ジョン君を去勢手術。
が・・・時既に遅くやちちゃんの腹にはクロコが・・・

貧乏ゆえに病院もいけず
耳ダニてんこ盛りだったジョン君
去勢手術の時、獣医さんに
「ついでに煙突掃除もしておきました」
と言われました・・・(−−)
耳ダニ駆除料金も取らなかった獣医さん有難う。
そんな獣医さんもいるんだな・・・

いいころオッサンになったジョン君だったが
よく甘える猫だった。
ネズミのオモチャを投げると拾って持ってくる。
何度でも何度でも拾ってくる。
犬かお前は??

ジョン君は私のバッグが好きだった。
化粧品の匂いがするからだろうか?
行方不明のときは大抵バッグに入ってる・・・(−−)
子猫の時からだったが、でかくなってもそうだった。
お陰様で私のバッグは形も崩れ
最後には伸びきってはちきれて使用不能に・・・
何故にそんなに化粧品の匂いが好きなんだ?
故に化粧パフは時折盗まれ
ズダボロになってテレビや冷蔵庫の下に押し込まれていたりする。
出かける直前にこれをやられ、
仕事場で歯形いっぱいの食いちぎられたパフを使っていて
変な目で見られたりもした。
「なにそれ・・・?」
「猫に食われました」

買い物袋に潜むジョン君

寂しがりのジョン君はいつも人の隣に来る。
仕事に出かけるとまずお見送り。
帰ると必ず玄関に座って待っている。
本当に猫か?

正月休みに挨拶に出かけたときの事、
家に帰ると迎えが無い・・・
鍵を開けていると蚊の鳴く様な声が
風呂場のあたりから聞こえてくる。
ジョン君は浴槽に落ちていたのだ。
幸い水は少なかったが出るに出られず
何時間も冷たい水に浸かっていたらしい。
私が飲み水を用意しておくのを忘れたので、
喉の渇いたジョン君は風呂の水を飲もうとしたのだろう。
冷え切ったジョン君を引き上げてコタツに押し込んだ。
ゴロゴロといつまでも喉を鳴らしていた。
それでも私を恨むでなし、余計に甘えて寄ってくる。
本当にかわいそうなことをしたと今でも心が痛む。

ジョン君はよく吐く猫だった。
仕事から帰って玄関に入ると、
たまにジョン君のゲロを踏んで滑りこける。
おのれ・・・こんなとこでてんこ盛り吐いたな・・・
して、仕事の疲れも癒せぬまま
ゲロを洗うことになる。
「髪を洗う女」ならぬ「ゲロを洗う女」・・・かっこよくない。

家に閉じ込めてばかりでも可哀相と
車に乗せて近所の公園に向かう。
最初は静かだったが数分経つと変な声で鳴き出す。
「あ!やばっ!この声は・・・」
車の中にゲロてんこ盛り・・・(−−)
ジョン君は車酔いが酷かったのだ。

ジョン君お迎えのポーズ

2004年5月中旬、ジョン君は何だか痩せてきているのに気付く。
調子も優れないのか丸くなってることが多い。
5月と言えども今まで暮らしてきた宮崎とは違いいつまでも寒いからではないか?
それともお腹に出来たできものが痒いせいだろうか?
とりあえず病院に連れて行く。
最初に行った病院では、去勢によるアレルギーで出来ているもので
完全に治る事は無いと診断、その薬を貰ってくる。

暫く薬を飲ませて様子を見た。
できものは薄くなってきたようだが、元気は相変わらず無い。
年のせいか??

5月末別な病院で精密検査をしてもらう。
検査の結果は慢性腎不全である。
「よく普通に生活出来ましたね・・・大抵の猫は動けなくなってるような状態ですよ」
「片方の腎臓は全く機能してませんね」
そこで薬を貰い一週間ほど様子を見ることにした。
病院から帰るとエサもほとんど食べなくなっていた。

一週間後再検査をするが、全く良くなってない。
緊急入院で点滴治療を開始。
「暫く様子を見ましょう。慢性的なものでしたらこれでもち直すでしょう。」

2日後お見舞いに行く。
状態は全く良くならない。
でも、家に帰りたいらしく、こちらを見て鳴き続けている。
「この子、何にも食べないんですよね・・・」
「缶詰は大好物でしたが、缶詰でも無理ですか?」
「そうですね、缶詰をあげてみましょう」

更に3日後お見舞いに行く。
相変わらず状態は良くならない。
「あれからやっぱり何も食べないんですよね・・・無理かもしれませんね。」
点滴をされた足が丸々と腫れていた。
「週2回透析をすれば暫くは大丈夫でしょうが、
透析は一回3万円なんですよね・・・どうなさいますか?」
・・・悲しいが無理だ。
そこでか弱く鳴き続けるジョン君を連れて帰った。

家に帰るとジョン君は少し元気になった。
足元はふらふらになっていたが
与えた缶詰も少し食べた。
お気に入りの窓際で以前のように外を見てくつろいでいた。

作業部屋は本来猫入り禁止区域である。
しかし、部屋の入り口でおもちゃのネズミを咥え、
空けてくれるのをじっと待ってるジョン君が
あまりにかわいそうだったので開放する事にした。
作業をする私の横でただゴロゴロ言いながら丸くなっている。
それだけの事だからいいじゃないかと思ったのだった。
何故オモチャのネズミなのか?
投げてはとって来させ、褒めてあげてたから
持って来れば喜んで開けてくれると思ったのだろうか?

次の日ジョン君はかなり息が荒くなっていた。
ハァハァ言いながら、それでも私の横にいる。
もう歩くのもやっとで水も飲めなくなっている。
トイレに行こうと歩き出して転ぶ。
また立ち上がってトイレに向かうが途中で漏らしてしまう。
申し訳無さそうに耳をそらして見上げる。
大丈夫叱らないから・・・

更に次の日ジョン君はもう歩けなくなっていた。
それでもトイレに行こうと立ち上がっては転ぶ
点滴をやめたので脱水症状も酷い
スポイトで水を与えるが、飲み込む事すら出来ない。
吐き気がするらしく、何度も吐こうとするが
もう吐くものも無い。胆汁さえ出てこない。

その時気付いたのだが、以前浴槽に落ちた時、
既に腎臓は悪かったのではないか?
腎臓を壊すとトイレによく通うようになり、水をたくさん飲みたがるという。
車酔いもそうだ。
腎臓をやられて血中に老廃物が溜まると吐き気をもよおすらしい。
何故その前兆を気付いてやれなかったのか?

12日朝、無理でももう一度病院に連れて行こうと
少しでも楽にしてもらおうと思った矢先、
ジョン君は突然絹を裂くような甲高い叫び声を上げた。
慌てて見に行くと唸りながら敷いてあった毛布に噛み付き
激しく痙攣を起こしている。
「ジョン!!」
声をかけながら背中をさする。
だんだん唇の色がなくなり、そのまま動かなくなってしまった。
毛布の上にもうなかなか出せなかったおしっこも出ていた

尿毒症。
ろ過し切れなかった毒素が脳にまわって
激しい痙攣を起こして死亡する。
退院させたとき解っていた。
それを自分で見届けないといけない事は・・・
その苦痛から逃れる方法は二つ
透析をするか、安楽死を選ぶか。
どちらも選べなかった自分は見届けるしかなかった。

ここまで書くのはどうかと思われるかもしれない。
しかし、猫の腎不全は決して少なくない病気です。
安易に人間の食べ物や塩辛いものをあげたり、
粗相をしたからと背中を強く叩いたり
ちょっとしたことですぐにかかってしまう病気なのです。
腎不全になったらどういうことになるか
前兆や症状について知っていただきたい。
それで気付いてやれることがあるかもしれないと・・・

その後、ジョン君を新しく洗濯した毛布に包んで
一日眺めていた。
苦しかったね・・・
何もしてあげられなかったね。

埋葬は悩んだ挙句、ペット専用の火葬車に来てもらう事にした。
遠い道のりだったにもかかわらず丁寧に焼いてくれた。
ジョン君の骨は今年も綺麗に咲いてくれた桜の木の下に埋まっている。
数日して蛍が舞いだした。
死んだ者の魂を天に導くとか聞いた気がする。

そして今年もまた蛍が飛び交う時期になった。