警視庁で豪腕を振るっていた刑事の軽が
猫山町に移動になって半年。
元の警視庁に復帰するには
多くの実績を積まねばならない。
・・・が、
ここ猫山町は平和で事件らしい事件は起きていない。
しかしそれは表向きである。
平和に見える裏では怪しげな組織が
人知れず動いている。
・・・と、軽は睨んでいた。
それがこの「控え室」である。
よって、証拠を押さえるため
今日も軽は控え室裏口を張り込んでいる。
統一感の無い控え室住人達は
それだけでことのほか怪しげだ。
まずこの植木職人。
人相も悪いが、そのチェーンソーにこびりついた
血痕は何だ?
・・・怪しい
そしてこの二人の女。
普通ではない服装に極めて悪人面。
いかにも何かしでかしてそうだ・・・
・・・怪しい
さらに、このオヤジ・・・
どう見ても痴漢ぐらいはやらかしそうだ。
・・・怪しい。
・・・などと軽が妄想を膨らませていると、
叫ぶオヤジが美海たんと買い物から帰宅。
美海たんはショッピングカートに乗せられている。
(疲れて歩けなくなったらしい。)
これは怪しい・・・
この二人、どう見ても親子には見えない。
これこそ俗に言う「幼女誘拐」ではないか?
この男、大体落ち着きが無いのが怪しい。
軽は叫ぶオヤジに任意同行を求めた。
が、誤解だのなんだかんだとうるさいので、
とりあえず手錠をかけて引っ張っていく事にする。
(いいのか?)
取調室に着くと
軽は早速美海たんの事を
誘拐だろうと激しく問い詰めた。
更に数時間にわたる取調べで
控え室での仕事や
人間関係など事細かに追及した。
・・・
軽は焦っていた。
取り調べは深夜まで及んだが、
結局怪しい点は見つけられなかったからだ。
いや・・・そんな事は無いはずだ。
刑事としての研ぎ澄まされた勘がこの男を
ここまで連れて来たのだ。
よく考えろ・・・考えるんだ軽!!
・・・これだ!
叫ぶオヤジ、
ショッピングカート窃盗の容疑で逮捕!!
軽は一つ実績を上げた。